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2010/12/18 (Sat) 江国香織「東京タワー」

 いまさらですが、うっかり江国香織さんの「東京タワー」を読みました。

 実は江国さんは勝手な先入観で苦手意識があって、ずっと読むのを避けてきた作家さんです。
映画「東京タワー」も、ずいぶん前に観たことがあるのですが、特に印象に残らず。
(というか、映画終盤、詩文が東京タワーを探して街を駆け回るシーン。やっとみつけた坂の上に大きく見える東京タワー。クライマックスのその瞬間、ぶっと思わずむせそうに。「ここじゃん!」と。それはまさに当時住んでいたおうちの前。「いやここからは東京タワーは見えないし、合成かな」とか「黒木瞳いつ来たんだろう」とか。一気に現実に引き戻されて、そのインパクトしか残っていないのです。)

 そんなこんなな東京タワー。
改めて読んでみて「こんな小説だったのか」とずいぶんな驚き。いい意味で。

 次の日も余韻覚めやらず、DVDを借りてきてみてしまいました。
そして「こんな映画だったのか」とこちらも驚き。(クライマックスはやっぱりうちの前でした。懐かしい。)

 原作と映画は別物というのは当たり前のことなので、そのことについてあれこれ言うつもりはないのですが、小説の登場人物がしなかったことで映画ではしていること。そのことで小説の人物のパーソナリティが変化していて、小説のことを思ったときに、その人物像がやより浮かび上がりやすくなったように思います。

 たとえば、透はあんなふうに感情を荒げたり殴りあったりはしないし、詩文はあんな惨めな姿をさらしたり、恋人を追ってパリまで行ったりしない。
 
 何でしないのか。

 なんていうか、小説の中の彼らは、自分のことも周囲のことも分かっているような分かっていないような。でも概ね現実にフィットしたそれを気に入っていて、満足して暮らしている。でも誰かを思う気持ちはまったく不可解なところからやってきたもので、その小さな爆発物みたいなものを「どおするかなあ」なんて思いながらボールみたいに手の中でポンポン持て余している。そんな感じ。

 だからきっと映画みたいな修羅場には絶対ならないだろうし、それがだから最初見たときの違和感につながったのだと思います。

 でも、恋というのはやっぱり、そんな良心や優しさや臆病心のなかで転がしながらも、もしも思いっきりやっていたらどうだろうかと常に思ってしまう厄介なものであるのも事実で。
 (たとえば恋人の夫を殴ったり、すべてを捨ててパリに追ってみたり…)
 そんな「もしも」を見せてくれるカタルシスというのが映画にはあるわけで、ファンタジーというのか何というのか。
 そういう意味で、小説を踏まえた上でのファンタジー映画という位置づけという感じで思ったらいい気がします。
 
 でもあの映画は見終わった後「恋っていいな」って思えなかった。むしろ「恋するって醜いな」と思ってしまいました。
 なり振り構わなず醜い姿をさらすのが恋の醍醐味なのかな。う~ん。

 小説にはなかったけれど映画では「人妻はいいよ。彼女達は楽しみに飢えているから」というせりふがありました。
 実際、詩文も喜美子も、耐えられないほどの孤独感を恋という名に変えて全力でぶつけているように見えて、それがたぶんいい気分になれなかったのでしょう。
 (黒木瞳も寺島しのぶも本当にうまかった。その表情が今も心に張り付いてしまっています。)

 「20歳も年下の恋に翻弄されるセレブ妻=本当は寂しくて不幸」
としてしまうステレオタイプはどうなのでしょうね。そういう図式を見て安心する人たちがいるということなのでしょうか。それともそれをぶち壊す、これまたカタルシスが求められているということなのか・・・。ヒットする映画というのはきっといろんな要素が受け入れられているのでしょうし…。ストレスフルな世の中ですね。

 私は小説の中の彼女達からはまったくそんな印象を受けませんでした。
みな私達同様にある面幸せで、ある面幸せとはいえなくて。

 「恋というのはするものじゃなく落ちるものだと思う。」
という文そのままに、分かっていたはずの日常の中にカタリと落ちてきたもの。恋とはただそれだけのもの。
 ただそれだけの小さな小さな心のありようを、江国さんは丁寧に描いた本当に力のある作家さんだと、しみじみ圧倒されてしまいました。
 平和な私は映画「東京タワー」より、江国香織「東京タワー」が好きですね。

 う~ん、しばらくは江国香織マイブームが起こりそうです。

 

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